笑いあり、恋あり、ロックあり、痛快青春地獄コメディ! 「TOO YOUNG TO DIE!」
365日映画カレンダー 8月27日
概要
クドカン作品の代名詞である長瀬智也と、神木隆之介のW主演による笑いあり、恋あり、ロックありの痛快青春地獄(ヘル)コメディ。
ごく普通の高校生・大助は修学旅行の途中、不慮の交通事故により死んでしまう。
大助が目覚めるとそこは地獄であった。煮えたぎる血の池、鬼たちからの拷問に泣き叫ぶ亡者たちを目にして大助は愕然とする。
しかし、自分が死んだことや地獄におちたことに納得のいかない大助。
そこに地獄専属ロックバンド「地獄図(ヘルズ)」のボーカル&ギターの赤鬼キラーKが出現する。
地獄で行われるロックバトルで優勝すれば人間に蘇れることを知った大助は、大好きなクラスメイト・ひろ美ちゃんに会うためにキラーKの鬼特訓をうけることなる。
感想
安定のクドカン作品
意外にも映画監督としての作品は4作目というクドカン作品は期待を裏切らない安定のおもしろさだった。自分のなかではクドカンというと「池袋ウエストゲートパーク」とか「流星の絆」のイメージがあるが、そういった従来のクドカン作品の良さはもちろん残しつつも、映画ということでドラマの枠では表現しきれないエンターテイメントに挑戦している点が好印象だった。
クドカン作品の良さはなんだろうか。
僕は彼の作品における「独特の世界観」や「テンポの良いストーリー展開」が好きだ。
まず作中の世界観について言及すると、地獄と言われれば誰もが思い浮かべるような禍々しい地獄のイメージをベースにしつつ、この映画で描かれる地獄はどこか楽しそうに描かれている。
ゲゲゲの鬼太郎のテーマソングに「試験もなんにもない♪」なんて歌詞があるが本作の地獄には地獄農業高校なるものがあり、さらにテストや部活動(野球、サッカー、軽音楽部!)まであって意外にいいところなんじゃないかという気持ちにすらなる。こういうあまりにもふざけすぎていて普通の監督ならためらうような設定をクドカンは喜々として取り入れるからこそ、唯一無二の「クドカンワールド」ができていくのだろう。
ストーリー展開も退屈しないように計算されていてよかった。
大助は複数回の転生をすることになる。地獄にはルールがあり転生回数が一定数を超えてしまうと鬼になってしまう。鬼になってしまうと閻魔大王のもとで働かなくてはならないのだ。
さらに転生と言っても簡単に人間として生まれ変われるわけではなく、大助はインコ、アシカ、ザリガニ、犬、カマキリ、などの様々な畜生(人間以外の生物)に生まれかわり、そしてやっと人間になれると思った束の間、精子に生まれかわり、即死してしまう。転生できる回数がだんだんと少なくなっていく大助。さらに地獄の時間軸と現実の時間軸はかなり異なり、大助が転生を繰り返すうちに現実世界では何十年も時がすぎていってしまう。
この生まれかわる→死ぬ、という形で文字通り「落ち」るので、まるでショートコントを観ているかのような気分になって退屈することなく作品を楽しむことができた。クドカンは映画を作るときに「エンターテイメント作品」であることをつよく心がけているらしく観る人を飽きさせないような工夫は映画のいたるところにちりばめられている。それにしても犬に生まれ変わった神木隆之介(声だけ)はかわいかった。笑
神木隆之介の演技がよかった
この映画が上映されたころの神木隆之介のイメージといえば「優等生的な役」だったが、本作によっていい意味で神木隆之介のイメージを壊すことができたのではないだろうか。
というのも大助はいかにも今時の若者という性格で、たとえば閻魔大王が「なんかがんばってるし、人間に生まれ変わっていいよ」と言ったときも「いや、いいっすよ。もう人間に生まれかわっても意味ないっすから」と気だるそうに答えたり、デブでブスなクラスメイトじゅんこちゃんと地獄で再会したときも彼女に辛辣な言葉をぶつけるなど、神木隆之介だったらやらないだろうな、言わないだろうなっていうセリフをバンバン言うので彼に対してのイメージはずいぶん変わった。(最近ではスマホ会社のCM「意識高すぎタカスギ君」を演じたり、割となんでも仕事をひきうけるようになったのかな?)
恋愛パートは意外とキュンとする!?
基本的にはコメディ路線で笑い80%くらいの感じで話が展開されていくのだけど、残り20%の恋愛パートの雰囲気に不覚にもきゅんとさせられてしまった。
まず大助が恋をしているクラスメイト・ひろ美ちゃん役である森川葵がかわいい。本当にかわいい。
ブログを書くたびに主演女優をかわいい!って書いてるような気がするけど、森川葵よかったなー。
「ねぇ、わたしのこと好きでしょ?」と思わせぶりなことを言って大助に困らせるシーンがあるのだけど、そのときの表情は本当によかった。あんなこと言われたら普通?の童貞男子だったらコロっと落ちてしまうだろう(ちなみに大助はカマキリになったときに童貞を喪失したあげく、そのまま食い殺されるという悲惨な目にあう)
ところで僕はこのシーンをみたとき、実はオチとして「ひろ美の方は大助にまったく興味がなくて、からかっているだけ」というパターンを予想していた。
しかし大助からもらったお守りをおばあちゃんになってからもひろ美はずっと大切に持っていたり、自分の子どもに大助のことを話したりと彼女の一途な姿が描かれていて、映画のドタバタした雰囲気とのギャップも相まってそこはすごくよかった。他にもキラーKの人間時代だったころのエピソードもなかなかいい話だった。
作中の音楽もいい
クドカン自身がバンドを組んでいるからっていうこともあるんだろうけど、作中での曲はどれもクオリティが高く、ノリがいいものばかりだ。あたりまえだけど映画のテーマにそった歌詞になっているし、ロックテイストだけではなくしっとりとした曲が用意されていた点もよかった。
「地獄図(ヘルズ)」のメンバー4人は長瀬智也を除けばみんな楽器演奏経験はほとんどないらしいが、神木隆之介、桐谷健太、清野菜名の3人は演奏がめちゃくちゃうまくて驚かされた。
こういう楽器演奏の練習時間ってどれくらいあるんだろうか?あくまでも演技がメインだから、合間に時間を見つけて練習するんだろうけど役者の人たちって本当にストイックな人たちが多いのだろう。
まとめ
ドタバタしているけどストーリーはそれなりにしっかりしているし、音楽あり笑いありで総合的なエンターテイメントの質としては非常に高かった。
だけどクドカン作品は正直に言ってしまえばかなり好き嫌いの評価が分かれると思う(ある程度「ノリ」が分かる若い人じゃないと白けてしまうかも)
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