世界よ、これが日本のライトノベルだ 「オール・ユー・ニード・イズ・キル」
365日映画カレンダー 9月13日 「オール・ユー・ニード・イズ・キル」
ラノベとは軽い文体でわかりやすく書いた若者向けの娯楽小説のことを指します。
普通の小説とラノベの境目がどこにあるのかは分かりませんが、特最近だと「異世界に転生する」という、いわゆる転生ものが非常に人気で、本屋に行ってみるとラノベ専用コーナーなんてものもあるから一定層にはかなり需要があるのでしょう。
さて、今回僕が観た映画「オール・ユー・ニード・イズ・キル」はなんと、日本のライトノベルを原作にして製作されているのだとか。(原作者は桜坂洋の「All You Need Is Kill」)
しかも製作された映画の主演はミッションインポシブルでおなじみのトムクルーズ!
まじか、すごい、すごすぎるよライトノベル!
ライトノベルといえばオタクくらいしか読まないのだろうと思っていたのだけど、その認識を改める必要がありそうですね。
概要
舞台は「ギタイ」と呼ばれるエイリアンの侵略によって壊滅的な打撃を受けている近未来の地球。
人類は敵の圧倒的な戦力の前に滅亡の危機に瀕していたが、「ヴェルダンの女神」の異名で知られる英雄リタ・ヴラタスキの活躍によって反撃の糸口をつかんでいた。
そんなある日、軍属の報道官であるウィリアム・ケイジ(トムクルーズ)は戦場の現地取材の任務を命令されるが、報道官の立場を利用してそれを拒否しようとする。
その結果、将軍から反感をかったウィリアムは地位を剥奪された挙げ句、最前線に送られてしまう。
感想
さすがラノベ原作!タイムループの能力を得た最弱主人公が死にまくる
今作の最大の魅力は何かと聞かれればたぶん僕は次のように答えますね。
それは・・・
トムクルーズがみじめに、かっこわるく、何度も死にまくるところ
僕は映画の事前情報がまったくない状態で見始めたので最初はとても驚きました。だって
映画開始20分くらいでトムクルーズがあっさり死ぬから
僕はいつも通りかっこいいトムクルーズが大活躍する映画なんだろうなとわくわくしながら映画を観ていたわけですが、いつものかっこいトムどこへ行ってしまったのか今作のトムはとにかく根性なしのへたれ野郎です。
トムが演じるウィリアムはわけもわからず敵地へむかう戦闘機に乗せられ、武器のセーフティ解除の方法も分からないまま敵エイリアン「ギタイ」の襲撃にあいます。
想定外の敵の猛攻撃により味方は次々と殺されパニックに陥りながら必死に逃げるウィリアムですが周囲は完全に敵に包囲されてしまい絶対絶命のピンチに陥ります。
ちなみに「ヴェルダンの女神」なんていかにも中二病的な通り名で呼ばれていた、「絶対最後まで生き延びるキャラ」と思っていた英雄リタ・ヴラタスキもめちゃくちゃあっさり死にます。
あれ?この映画大丈夫?
ウィリアムは逃げまといながら、なんとか敵の一匹を倒すことに成功しますがそのあとすぐに殺されてしまいます。
「あれ、映画おわっちゃうじゃん・・」
ところがこの映画はここからがおもしろい!
実はウィリアムが死ぬ直前に倒した敵はギタイのなかでも「超レア」な「アルファギタイ」と呼ばれる種類のもので、その血を浴びたことにより「経験したこと」を保持したまま過去にワープする「タイムループ」の能力に目覚めます。さすがライトノベルが原作だけあっていかにもそれっぽい設定ですね。
タイムループの能力を得たウィリアムは「敵地に向かうまでに過ごした2日間」という、なんともめんどくさい期間を何度も体験します。ウィリアムが得たタイムループ能力の特徴として「経験したこと」を引き継げるので、彼は必死に味方たちに次のようなことをいいます。
「敵がたくさん待ち伏せしている!これは罠だ!俺を信じてくれ!俺は未来が分かるんだ!」
その結果どうなるかというと
「味方からドン引きされます」
まあそりゃそうですよね。僕のまわりでこんな人がいたら評判のいい病院を紹介するでしょう。
再び戦場へと行くはめになったウィリアムは、タイムループで何度もみた光景を目にしながら敵に殺されてしまいます。そして2日前にまた戻るウィリアム。
しかし何度も死ぬうちにウィリアムはこれから起こる出来事をすこしずつ記憶していきます。
敵がどの方向から来て、どんな攻撃をするかをすべて知っているので脅威を回避しながらすこしずつ未来を進めていくのですが、この過程がすごく面白かったですねー。
目覚める→死ぬ→目覚める→死ぬ・・という無限ループを繰り返すうちに段々たくましくなっていくウィリアムが非常にいい味をだしていました。
「最初は弱かった主人公」がすこしずつ強くなっていく展開って、なんだか主人公を応援したくなっちゃんですよね。
話はすこしそれてしまいますが、AKBを売り出すとき秋元康は「普通の女の子がアイドルとして成長していく姿」をファンに届けることを心がけたそうです。
今作の主人公もすこしずつ成長していきます。最初は「かっこわるいトムクルーズ」ですが、死にまくった結果、ラストに近づくにつれてたくましい表情になっていき仲間からも一目置かれる存在になったトムは僕たちがよく知っている「かっこいいトムクルーズ」です。
やたらとかっこいい敵のデザイン!でも設定が無駄に凝っていて理解しにくい
まず、敵エイリアンである「ギタイ」のデザインはシャープで本当にかっこいいです。僕のイメージ的にはもののけ姫の祟り神みたいなイメージ??
また動きがかなり俊敏で、たった一体現れただけでも「もうこれだめだろ・・」という絶望感があってよかったです。ギタイとの戦闘シーンは大迫力で、これは絶対に映画館で観るべきシーンだなと思いました。
まあ敵のデザインがかっこいいのは素晴らしいことだと思うのですが、問題なのは
敵の能力設定
です。
微妙に分かりにくいうえに作中ではそれほど言及されないので初見の人はきっと映画をみたときに「どういうこと?」ってなると思います。
ざっくり説明すると・・
①敵は3種類いる
○ギタイ・・・一番多いタイプの敵
○アルファギタイ・・超レアな敵。何万体に一体しかいない。主人公ウィリアムが死ぬ間際に倒したのがこいつ。
○オメガギタイ・・一体しかいない。例えるなら人間の脳のような存在で、オメガギタイがすべてのギタイに指令を送っている。
②敵の能力
アルファギタイが死ぬと、オメガギタイがそれを感知して時間を戻すことができる(つまりタイムループ能力が発動する)アルファギタイはタイムループのトリガーみたいな存在で、その引き金をひくのがオメガギタイっていうイメージですかね。
・・・・は????(笑)
ってなりますよね。説明が下手ですいません
この能力があるとなにがうれしいのかというと、時間を戻して
人類がどういう作戦で攻めてくるかを学習しようとしているんですよね。
何回かタイムループを繰り返して敵の行動パターンを読んで、その裏をかいて攻撃しようということです。普通に戦っても人類は絶望的なのに、さらにこんな能力まで使ってくるなんてまさに「チート」です。
しかし敵側にも想定外なことがあって、アルファギタイの血を浴びた人間はタイムループ能力に目覚めてしまうのです。これが要因でウィリアムは能力にめざめてしまうわけですが、僕の中で疑問があって
・オメガギタイがタイムループを管理しているならウィリアムが死んだときはタイムループ発動しなければいいんじゃないの?オメガギタイにはそれが判断できない?
謎は残りますが、作中ではなんとくふわっとしたノリのまま進みます。
(ちなみに、敵の能力について「ジョジョの奇妙な冒険」を思い出したのは僕だけじゃないはず)
最後はやっぱり王道ヒーローもの
へたれだったウィリアムも幾度となく死を経験したことにより、最後はかっこいい姿になります。ギャップ萌えなんて言葉が世間にはありますが言ってしまえばそんな感じでっす。
やっぱりかっこいい役のトムクルーズは絵になります。
まとめ
最初は貧弱だった主人公がすこしずつ成長していくという構成は非常に面白かったです。
ただ敵の能力の説明をもうすこしわかりやすくしてほしかったですね。能力を分かっているかによって物語のオチへの理解度も変わってくると思いますし。
あとウィリアムが「ふぁっ!」みたいな声を発してすぐに死ぬのが個人的にはツボでした。
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