エンジニアが映画評論家になるブログ

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エンジニアをしている普通のサラリーマンが、映画評論家になってどや顔で映画評論するまでの軌跡を綴るブログです

インド版 クイズミリオネア? 「スラムドッグ$ミリオネア」

365日映画カレンダー 9月14日 「スラムドッグ$ミリオネア」

 

日本で「クイズ$ミリオネア」という番組が放送されていたのを知っていますか?

司会は「みのもんた」で「ファイルナルアンサー?」と回答者に尋ねるシーンは当時話題になりましたよね。

 

www.fujitv.co.jp

 

日本の番組だと思っていたのですが実際にはイギリスやインドで同じような番組がすでに放送されており(一番はじめはイギリスっぽい)、要は輸入された番組のようです。

 

さて、僕が今回観た映画「スラムドッグ$ミリオネア」は簡単に言ってしまえば、あるひとりの若者がインド版クイズミリオネアに挑戦する物語です

 

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司会者のテンションが正直、腹立つ

youtu.be

 

概要

インドの大都市ムンバイのスラム街で生まれ育ったジャマールは人気クイズ番組に出演することになる。

ジャマールは次々とクイズに正解していき、ついに最後の一問にまで到達するのだが無学でスラム出身であるジャマールに不正の疑いがかけられ、彼は警察に連行されてしまう。

警察の取り調べの中、彼は自分の生い立ちとその背景を語るのだった。

 

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インド=IT大国というイメージが強いが地域格差がかなり大きいのだろう

 

感想

ミリオネアの簡単なルールについて

そもそもクイズ$ミリオネアのことを知らないという人もいるかもしれませんのでクイズのルールを説明しておきます。

 

簡単に言ってしまえば4択の問題を解答者が答える、という形式です。

映画では9問正解すればよく、番組名がミリオネア(億万長者)であることから分かるように成功報酬として多額の賞金がもらえます。

 

賞金は2000万ルピー。

日本円に換算すると何円くらいかなと思って調べたところ

 

1,378万929円(2019年9月13日時点)

 

ということが分かりました。まあ高額には違いないですね。

 

あと回答者にはライフラインという3種類の救済措置があります。

 

オーディエンス・・スタジオにいる観客を対象にしてどれが正解かアンケートをとることができる。一般正解率が高い問題なら有効ということ。

 

50:50(フィフティーフィフティー)・・4択を2択まで絞れる。

 

テレフォン・・知人に電話ができる。しかし制限時間が決まっていること、問題文から読み上げる必要があることから意外に使えない。

 

クイズ$ミリオネアについての説明はこれくらいあれば十分でしょう。

それではさっそく具体的に映画の感想についてです。

 

映画の開始早々から嫌な予感しかしない

 

彼はあと一問でミリオネア。なぜ勝ち進めた?

 

A インチキをした

B ツイてた

C 天才だった

D 運命だった 

 

チック♪タック♪ チック♪タック♪ 

映画冒頭でいきなり上記のようなクイズが出題されます。

さて、この質問に対してみなさんはどう思いましたか?

 

フィフティーフィフティーをつかいますか?

それともテレフォンをつかいますか?

 

え?必要ない?

そうですよね。

 

もし僕がクイズの解答者だったら1秒で「ファイナルアンサー」って言います。

だって

 

答えはどうせ D 運命だった 

 

っていうつもりなんでしょ。ため息が出そうです。

これから先を観るべきか正直迷いました。

しかしぐっとこらえて鑑賞を続行することに。

なぜなら今作は第81回アカデミー賞で8部門受賞というすばらしい評価を受けた作品だからです。

 

まさかそんな作品が映画開始2分くらいでこれから起こる物語を「運命でした」という言葉一つで片付けるはずがありません。

そうだ、そうであってほしい。

祈るような気持ちで、僕は映画の続きに注目することにしました。

 

さすがアカデミー賞受賞作!

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冒頭では不安しかありませんでしたが序盤が終わったころには僕はすっかり映画の世界に引き込まれていました

 

主人公ジャマールは大人気クイズ番組に出演し、あと一問正解すれば最高賞金獲得というところで不正の疑いをかけられ警察に連行されます。

 

警察官はジャマールのことをかなり疑っており

おまえみたいにスラム出身のやつがクイズに答えることができるわけない。不正したんだろ!?

と言ってののしりますが

それに対してジャマールは「僕は答えがちゃんと分かっていた」と反論します。

学者などの知識人が挑戦しても全問正解できなかったクイズを、どうしてスラム出身の字の読み書きもよくにできない少年が答えることができたのか?

 

それは

ジャマールは実際に様々な経験することで、知識として蓄えていったからです。

 

例えば

 

ラーマ神の描写で彼が右手に持つ物は何でしょう? 

 

という問題があったのですが、ジャマールはその答えを自身の経験から導きだします。

しかしそれは彼にとってひどく悲しい経験でした。

 

ラーマ神とはヒンドゥー教の神で(ちなみにジャマールはイスラム教徒)、彼が住む地域でヒンドゥー教イスラム教の宗教争いがありジャマールの母親はヒンドゥー教徒殺されてしまいます

 

暴走したヒンドゥー教徒から逃げるジャマールはその途中、「ラーマ神」の姿した少年が「弓と矢」を持っているのを目にしたのです。そのときの経験のおかげでジャマールは見事クイズに正解します。

 

経験は知識に勝る、っていうのがいいですね。本当の意味で知識を得るためにはただ本を読むだけではダメで、実際に体験して自分の肌で感じてはじめて知識は自分の体に蓄積されていくのでしょう。

こういった人生の教訓を示してくれる映画は個人的に好きです。

 

今作はこのようにクイズの問題が出題される→問題にまつわるジャマールの過去が明かされるという構成になっていて、インド(特にスラム街)がかかえる社会問題などが浮き彫りにされてその内容はとてもショッキングでした。

日本に住んでいる僕たちでは想像もできないような貧しい生活をするなかで、力強く生きるジャマールの姿には心うたれました。

 

しかし・・・

 

ジャマールの過去を説明するために用意されたんじゃないの?っていう問題

 

バンバン出題されます。(笑)

ジャマールが不正をしたというより、クイズの出題者を疑うレベルです。

 

まさか本当に映画のオチは「運命だった」なんて言わないだろうな・・・

と心配しながらも、そこはアカデミー賞受賞作、ぜったいに最後は大ドンデン返しで僕を驚かせてくれるにちがいない!

そう思いながら映画はラストへと向かいます。

 

そして予想通りの残念なラスト

彼はあと一問でミリオネア。なぜ勝ち進めた?

 

A インチキをした

B ツイてた

C 天才だった

D 運命だった 

 

結論から言ってしまえば 

答えは D 運命だった でした。(笑)

いやー本当に残念ですねー。

だってそれまでの問題はジャマールの「体験」を通して解答していたのに

ラストの問題をジャマールは

 

なんとなくそうだと思った

 

で、正解、終わり、なんてひどくないですか?

 

この問題を解くにあたってヒロインの女の子との恋のエピソードが進むわけですが、結局その彼女にテレフォンを使って助けを求めるシーンでは彼女に

 

ごめん、分からない(笑)

 

と言われ、しかもヒントらしきヒントもまったくもらえません。

それで最後はカンで解答して「全問正解する運命でした~ははっ!」なんて・・これまでの問題はなんだったの?って感じです。

 

今作に関してはラスト以外は本当によかっただけに悔やまれます。(あとインド独特のじゅわ~わ~ん♪みたいな音楽はまじで無理だったけど)

 

しかし残念なラストに悲観している僕に、さらなる追い打ちが待っていました。

今作はインドを舞台にしています。じゃあインド映画と言ったら?

 

インド映画ってどうして踊るの?

youtu.be

 

なぜ踊った?(怒)

ちなみに今作、イギリスで制作された映画ですから。

 

インド映画 なぜ踊る 

 

で検索してみましたけど明確な理由はないみたいですね。

インドは多言語文化だからダンスだったら言語にかかわらず楽しめるっていう理由が僕的には一番しっくりきましたけど、実際はどうなんですかね。

 

まとめ

途中まではすごくいい感じにストーリーが進んでいたのに、ラストはかなり残念な展開。

あとアカデミー賞受賞作の傾向がなんとなく分かってきたような気がする・・。

 

ブログ作成時間:35分