エンジニアが映画評論家になるブログ

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エンジニアをしている普通のサラリーマンが、映画評論家になってどや顔で映画評論するまでの軌跡を綴るブログです

安定の「三谷映画」。登場人物たちが物語を面白おかしく展開させる。 観る価値ありの映画「記憶にございません!」

365日映画カレンダー 9月16日 「記憶にございません!」

 

三谷幸喜監督の長編映画8作目である今作は記憶をなくした総理大臣が主人公のコメディ映画です。

 

率直な感想としては面白かったですね! 

 

普段僕が行く映画館はよっぽどの話題作でなければ劇場が満員になることなんてほとんどないのですが、開演時間ギリギリに劇場へ行くと、席がほとんど空いていなくて驚きました。世間の期待値はかなり高いようです。

三谷監督のコメディ映画だけあって、笑いのシーンがてんこ盛りで館内はたくさんの笑いのつつまれていました。

 

若い人はあまりおらず、年配の人が多かった印象ですかね。

 

しかし誰でも楽しめる映画であることは間違いないと思うのでまだ観ていない人は是非、映画館へ足を運んでみてはどうでしょうか。

 

youtu.be

 

 

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こうしてみると女性の登場人物多めですね

概要

国民からは史上最悪のダメ総理と呼ばれた黒田啓介は、演説中に一般市民の投げた石が頭にあたり一切の記憶を失ってしまう。

国会議事堂の本会議室の場所すら分からない黒田であったが、優秀な秘書官たちのサポートによりなんとか日々の公務をこなしていくのだった。

 

感想

黒田総理が面白い

まず演技力がちゃんとある人たちが出演していて安心しました。

宣伝目的で今が旬のタレントを起用する映画って結構多いですからね(しかも制作はフジテレビということもあって、僕的に配役は心配だった)

 

三谷監督の作品ってストーリーがあって物語が進む、というより登場人物たちが物語をすすめるという印象なんです。

どういうことかと言うと、個性的なキャラクターたちがバタバタやっているうちにいつの間にかひとつの物語として完成してしまうというイメージ。

 

今作の主人公である総理大臣・黒田のキャラクターがインパクト抜群です。

 

国民にむかって「このクソやろーがぁぁ!」なんて言う総理大臣、ありえないですよね?

とまあこんな具合に記憶を失う前、黒田は最低最悪の総理大臣だったわけですが、記憶を失ったことで彼の人間性が大きく変わります。

 

それまでの黒田はサウナつきの国会議事堂を建設すると言ったり秘書官役の小池栄子のおしりをさわったり公費でピザを注文したりと、よく総理を続けていられるなというレベルのクズっぷりでした。

 

口調も丁寧になって、物腰も低いため黒田の記憶がなくなったことを知らない周囲の人間たちはみな驚きます。まあ普通ならそりゃ驚くだろうけど。

 

それにしても中井貴一は器用な役者ですね。

最悪キャラと、気弱で真面目なキャラを見事に演じきっていたと思います。

 

女性キャラが特に個性的。作品を大いに盛り上げてくれた

意識してそうなっているのかは分からないですけど、全体的に女性キャラの方がいい味を出していたように思います。

 

首相官邸料理人役の斉藤由貴はどこか抜けていて、とにかくマイペース。年齢は結構いっているはずだけど若々しくて美人だったなー

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甘い物がほしい、と言う黒田。「いつものやつでいいですか?」というセリフのあとになぜかチョコバナナが差し出される

 

秘書官役の小池栄子は冒頭では黒田を嫌っていたが、記憶をうしなった黒田の純粋さに少しずつ心を動かされ、黒田のよき理解者に。

ちなみに下記のゴルフシーンではおそらくアドリブと思われるシーンがあって、中井貴一小池栄子が完全に素で笑っていてほほえましかった。

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小池栄子はキャリアウーマン役が似合う。知的でセクシー、だけどギャグもいける。

 

米国初の日系女性大統領を演じた木村佳乃は、めちゃくちゃ嘘くさい英語で、「アメリカンチャリーの関税を下げろ」と要求してきます。

訪日した主な目的がアメリカンチェリーだったなんて・・・笑

米国の大統領がこんな人だったら、日本とアメリカの関係はもっと良かったことでしょう。

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米国初の日系女性大統領。もはや設定からしてギャグでしかない。(笑)

 

 

他にも第二党首役の吉田羊はいきなり黒田の服を脱がせ

わたしが全部やるから、僕はじっとしていて

という変態ぶりを発揮してくれます。

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こんな美人なお姉さんにいじめられたい

 

このように女性キャラたちがみな生き生きとしていて、非常に個性的でした。

 

誰も不幸にならない映画。ひらすら「楽」が続く。

今作は頭をからっぽにしてとにかく楽しく観ることができる映画です。

 

社会問題に対してするどい切り口で疑問を投げかけるような映画を観たい日もありますが、三谷監督が手がける作品のように「誰も傷つかない、みんながハッピーになれる」映画を観たくなる日だってもちろんあります。

 

今作では誰も不幸になりません。総理の記憶喪失という騒動を通じて登場人物たちはみんなすこしだけ幸せになります。

 

日常生活では簡単に「バカ」にはなれないですよね?

バカになれない僕たちの代わりに、登場人物たちはとことんバカになってくれます。

特に総理大臣である黒田は、愛すべきおバカさんです。

今のご時世、総理が

 

だから記憶にねぇっていってんだろーが!うるせーな!

 

なんて言った日には速攻で辞任まで追い込まれると思います。twitterは炎上し、ネットは大荒れになるでしょう。

だけど今作ではそんな横柄な態度をとる総理に対してもみんなどこか優しくて、こんな緩い世界が本当にあったならどれほど楽しく生きられるだろうかという気持ちにさせられます。

 

素晴らしい映画とは「こんな世界があったら面白いだろうな」と思わせてくれるような映画だと思います。

 

公用車でSMクラブに8回行っても許される世界

女性記者に向かって「ゴリラみたい」と言ってもゆるされる世界

支持率が2.8%でもなんとかなる世界

政治的な知識が全くなくても、なんとか総理大臣がつとまる世界

 

こんな世界があったら面白いだろな(こんな総理がいたらまじでいやだけど)、そんなことを少し考えるだけで肩の力がすこしだけ抜けて、明日からまた頑張ってみようかなという気持ちにもなれます。

「毎日、会社と自宅の往復でうんざりだ」という人こそ、この映画を観て一度肩の力を抜いてみてはどうでしょうか。

 

まとめ

 期待通りの三谷作品でした。

三谷監督の作品を多く観ている人は「またこんな感じか」と思うかもしれませんが、それでもやっぱり楽しませてくれるところはさすが三谷幸喜といった感じです。

ただ一点だけ難癖をつけるとしたら、二時間ずーっとバカをやるので、途中ですこしだけ中だるみしてしまったかも。個人的には、一時間半くらいの尺がちょうどよかったと思いました。

 

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