正直そこまでやるとは思っていなかった!松坂桃李が娼夫を熱演 映画「娼年」
365日映画カレンダー 9月17日 「娼年」
石田衣良さんといえば「池袋ウェストゲートパーク」でも有名な売れっ子作家です。
余談になりますが、石田衣良さんの名字は「石平」というそうです。
そのまま読みにしてみると、「いしだいら」。
さらに音に漢字をあてると・・・
「石田衣良」
なるほどって感じになりますよね。
このペンネームだと電話で仕事のやりとりをするときにすごく便利なのだそうです。電話口で
「いしだいらです」
っていえば本名もペンネームもどちらも対応していますからね。 賢い!
さて僕は小説を読むほうなのですが石田衣良さんの作品は特に好きで、今回映画「娼年」を観るにあたって
どれくらい小説の描写を再現できているか
小説にはできない、映画ならではの表現ができているか
という観点でみました。
結論から言ってしまえばやっぱり小説の世界観には及ばなかったかなという印象です。
しかし出演している俳優さんたちの演技はすばらしかったです。
特に松坂桃李は
ここまでやっていいの?
と言いたくなるほどガッツンガッツンセックスをしていました。
あと、濡れ場シーンはかなり多めなので家族と観るのは絶対に辞めた方がいいです。(笑)
概要
女性にもセックスにも楽しみを見いだせない大学生のリョウは、女性向けの会員制ボーイズクラブのオーナである御堂静香に誘われて娼夫の仕事を始める。
感想
レビューサイトを見ると辛辣なコメントが多いが、物語の設定はものすごくいい
映画のレビューサイトを見ると厳しい意見が多かったですね・・・。
・ただのポルノ映画
・松坂桃李のAV
・結局なにが言いたいのかさっぱり分からん
小説を読んでいない人からすると確かにそう思ってしまうのも無理があるかもしれません。
松坂桃李が過激な演技に挑戦する、という部分にあまりにも時間を割きすぎてしまったために、登場人物たちの内面がほとんど説明できていないんですよね。
特に主人公リョウに関しては「幼いころに母を亡くしており、今でも忘れることができないでいる」わけですが、その辺の描写も作中ではほんの少ししかなくて初見の人にはなかなか伝わりにくいのだと思います。
今作のテーマとは?と聞かれたら僕は「主人公リョウの、成長の物語である」と答えます。
「成長」というポジティブなワードと「娼夫」、「セックス」とがなかなか結びつかないかもしれませんが、リョウは娼夫としてたくさんの女性と接するうちに次第に変化していきます。
その変化は原作だとしっかりと描写されています。以下、引用文です。
女性ひとりひとりのなかに隠されている原始的な欲望を見つけ、それを心の陰から実際の世界に引き出し実現する。
それが娼婦の仕事だと僕は考えるようになった。
ぼくは娼夫になり、より自由になった。
ある人が語るストーリーが世間の常識やよい趣味からはずれていくとき、身をひいて心を離してしまうのではなく、それまでよりもっと耳を澄ますようになった。
欲望の秘密はその人の傷ついているところや弱いところにひっそりと息づいているからだ。
この二つの文章を読んでから映画をみるだけで、かなり印象が変わると思うんですよね。
逆にこの文章を見ないでそのままの映像だけで作品を理解しようとすると
かなりマニアックな趣味をもった女性たちが登場する映画
という間違った判断をしてしまうかもしれません。
娼夫として出会う女性たちのトラウマや悩み、葛藤にそっと寄り沿い、彼女たちの欲望を具現化させていく過程でリョウ自身も次第に喜びを感じるようになっていきます。
それまでは「セックスなんて退屈な単純作業」と思っていたリョウですが、そうではないということに気がつきます。
このように今作はリョウの成長を描いた物語であって、過激な性描写をウリにした映画ではないということが分かっていただけたのではないでしょうか。
特に印象深い登場人物
・ヒロミさん
「ねぇ、ここでしよう」
彼女が鉄の扉に手をついたのがわかった。
尻をこちらにむけているようだ。
間違いようのない性器のにおいが立ち上がってくる。
彼女の尻を両手で引きあげるように割った。
出会った当初は落ち着いた大人の女性・・・という感じだったけど、ホテルに着くなり激しくリョウを求める。めちゃくちゃ色っぽかった。
・イツキさん
「あっ」
彼女は椅子から飛び降りるように離れた。
肩幅ほどに広げた足が床につくと、そのままつま先立ちしている。
太ももが痙攣を起こしたように震え、たたきつけるような水音がした。
イツキさんは彼女と対等の会話ができるくらいの知性を持ち合わせた男性に
「自分のおしっこをしているところをみてもらいたい」
という欲求をもっています。
こういう趣向の人も間違いなく一定数いるんだろうな。人間って面白い。
・七十歳の女性
「・・・よかった」
温泉に肩までつかったように漏らす。
僕は目を丸くしてとなりに座る小柄な老女を見つめていた。
「あの、今ので、いっちゃったんですか」
老女は紅潮した頬でうなずいた。
手をにぎって、若い男が話すのを聞くだけでエクスタシーを感じることができる女性です。
歳をとるとこんな芸当ができるそうです。いや、無理だろ(笑)
・アズマ
「あっ」
僕とアズマの声は同時だった。
アズマは口をおおきく開けたまま、頬を寄せて不可解な角度に曲がった小指を見ている。
苦痛と快楽の回路が壊れてしまっている少年アズマ。
リョウに小指を折ってくれ、と言うシーンはさすがに直視できなかった。
まとめ
性描写のシーンにどういった意味が込められているかを考えると映画の見方が変わると思います。
原作が既読という人はすこしイメージとちがう、という感想をもつかもしれません。もっと映画ならではの工夫があるとよかったんですけど、映像と音楽は意外と普通でそこは残念でしたね。
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安定の「三谷映画」。登場人物たちが物語を面白おかしく展開させる。 観る価値ありの映画「記憶にございません!」
365日映画カレンダー 9月16日 「記憶にございません!」
三谷幸喜監督の長編映画8作目である今作は記憶をなくした総理大臣が主人公のコメディ映画です。
率直な感想としては面白かったですね!
普段僕が行く映画館はよっぽどの話題作でなければ劇場が満員になることなんてほとんどないのですが、開演時間ギリギリに劇場へ行くと、席がほとんど空いていなくて驚きました。世間の期待値はかなり高いようです。
三谷監督のコメディ映画だけあって、笑いのシーンがてんこ盛りで館内はたくさんの笑いのつつまれていました。
若い人はあまりおらず、年配の人が多かった印象ですかね。
しかし誰でも楽しめる映画であることは間違いないと思うのでまだ観ていない人は是非、映画館へ足を運んでみてはどうでしょうか。
概要
国民からは史上最悪のダメ総理と呼ばれた黒田啓介は、演説中に一般市民の投げた石が頭にあたり一切の記憶を失ってしまう。
国会議事堂の本会議室の場所すら分からない黒田であったが、優秀な秘書官たちのサポートによりなんとか日々の公務をこなしていくのだった。
感想
黒田総理が面白い
まず演技力がちゃんとある人たちが出演していて安心しました。
宣伝目的で今が旬のタレントを起用する映画って結構多いですからね(しかも制作はフジテレビということもあって、僕的に配役は心配だった)
三谷監督の作品ってストーリーがあって物語が進む、というより登場人物たちが物語をすすめるという印象なんです。
どういうことかと言うと、個性的なキャラクターたちがバタバタやっているうちにいつの間にかひとつの物語として完成してしまうというイメージ。
今作の主人公である総理大臣・黒田のキャラクターがインパクト抜群です。
国民にむかって「このクソやろーがぁぁ!」なんて言う総理大臣、ありえないですよね?
とまあこんな具合に記憶を失う前、黒田は最低最悪の総理大臣だったわけですが、記憶を失ったことで彼の人間性が大きく変わります。
それまでの黒田はサウナつきの国会議事堂を建設すると言ったり、秘書官役の小池栄子のおしりをさわったり、公費でピザを注文したりと、よく総理を続けていられるなというレベルのクズっぷりでした。
口調も丁寧になって、物腰も低いため黒田の記憶がなくなったことを知らない周囲の人間たちはみな驚きます。まあ普通ならそりゃ驚くだろうけど。
それにしても中井貴一は器用な役者ですね。
最悪キャラと、気弱で真面目なキャラを見事に演じきっていたと思います。
女性キャラが特に個性的。作品を大いに盛り上げてくれた
意識してそうなっているのかは分からないですけど、全体的に女性キャラの方がいい味を出していたように思います。
首相官邸料理人役の斉藤由貴はどこか抜けていて、とにかくマイペース。年齢は結構いっているはずだけど若々しくて美人だったなー
秘書官役の小池栄子は冒頭では黒田を嫌っていたが、記憶をうしなった黒田の純粋さに少しずつ心を動かされ、黒田のよき理解者に。
ちなみに下記のゴルフシーンではおそらくアドリブと思われるシーンがあって、中井貴一と小池栄子が完全に素で笑っていてほほえましかった。
米国初の日系女性大統領を演じた木村佳乃は、めちゃくちゃ嘘くさい英語で、「アメリカンチャリーの関税を下げろ」と要求してきます。
訪日した主な目的がアメリカンチェリーだったなんて・・・笑
米国の大統領がこんな人だったら、日本とアメリカの関係はもっと良かったことでしょう。
他にも第二党首役の吉田羊はいきなり黒田の服を脱がせ
「わたしが全部やるから、僕はじっとしていて」
という変態ぶりを発揮してくれます。
このように女性キャラたちがみな生き生きとしていて、非常に個性的でした。
誰も不幸にならない映画。ひらすら「楽」が続く。
今作は頭をからっぽにしてとにかく楽しく観ることができる映画です。
社会問題に対してするどい切り口で疑問を投げかけるような映画を観たい日もありますが、三谷監督が手がける作品のように「誰も傷つかない、みんながハッピーになれる」映画を観たくなる日だってもちろんあります。
今作では誰も不幸になりません。総理の記憶喪失という騒動を通じて登場人物たちはみんなすこしだけ幸せになります。
日常生活では簡単に「バカ」にはなれないですよね?
バカになれない僕たちの代わりに、登場人物たちはとことんバカになってくれます。
特に総理大臣である黒田は、愛すべきおバカさんです。
今のご時世、総理が
「だから記憶にねぇっていってんだろーが!うるせーな!」
なんて言った日には速攻で辞任まで追い込まれると思います。twitterは炎上し、ネットは大荒れになるでしょう。
だけど今作ではそんな横柄な態度をとる総理に対してもみんなどこか優しくて、こんな緩い世界が本当にあったならどれほど楽しく生きられるだろうかという気持ちにさせられます。
素晴らしい映画とは「こんな世界があったら面白いだろうな」と思わせてくれるような映画だと思います。
公用車でSMクラブに8回行っても許される世界
女性記者に向かって「ゴリラみたい」と言ってもゆるされる世界
支持率が2.8%でもなんとかなる世界
政治的な知識が全くなくても、なんとか総理大臣がつとまる世界
こんな世界があったら面白いだろな(こんな総理がいたらまじでいやだけど)、そんなことを少し考えるだけで肩の力がすこしだけ抜けて、明日からまた頑張ってみようかなという気持ちにもなれます。
「毎日、会社と自宅の往復でうんざりだ」という人こそ、この映画を観て一度肩の力を抜いてみてはどうでしょうか。
まとめ
期待通りの三谷作品でした。
三谷監督の作品を多く観ている人は「またこんな感じか」と思うかもしれませんが、それでもやっぱり楽しませてくれるところはさすが三谷幸喜といった感じです。
ただ一点だけ難癖をつけるとしたら、二時間ずーっとバカをやるので、途中ですこしだけ中だるみしてしまったかも。個人的には、一時間半くらいの尺がちょうどよかったと思いました。
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邦題タイトルが親父ギャグ! いろいろな意味でさすが韓国映画 「新感染 ファイナル・エクスプレス」
365日映画カレンダー 9月15日 「新感染 ファイナル・エクスプレス」
「ゾンビ」と言われれば今や誰もが生きる屍であるゾンビの姿を簡単に連想できると思いますが、ゾンビの歴史を調べてみたところ意外にも日本に認知されたのは1980年代らしく、結構最近なんだなということにまず驚きました。
さて、僕が今回観た映画は「新感染 ファイナル・エクスプレス」
韓国ではまだゾンビ映画はあまり浸透していないらしく、今作では「ゾンビ」というキーワードは出てきません。
しかしゾンビ映画としての今作の評価は世界的にも高く、さまざまな映画賞を獲得しているみたいです。
ところで原題は「釜山行(プサン行き)」。
それに対して日本版のタイトルは「新感染」
今作の主人公は、乗り込んだ列車内でゾンビによる襲撃にあいます。
新感染・・・
しんかんせん・・
新幹線・・・(笑) まさかの親父ギャグ。
概要
仕事人間のソグは妻と別居をしており、年老いた母、そして娘のスアンと暮らしていた。
ソグは娘の誕生日に何が欲しいかと尋ねると、「釜山にいるお母さんに会いたい」とスアンは言う。
ソグは娘をつれてソウル発釜山行きの列車に乗り込むが、突然、凶暴化した乗客が別の客を次々と襲い車内はパニックに包まれてゆくのだった。
ゾンビメモ
・ゾンビという呼び方はコンゴという国で信仰されている神「ンザンビ」(Nzambi = 不思議な力を持つ者)に由来する。中米や西インド諸島に伝わってゆくなかで「ンザンビ」が「ゾンビ」に変化してしまった。
・ゾンビの起源は西アフリカのベナンやカリブ海のハイチという地域で信仰されている民間信仰・ブードゥ教にある。
・ブードゥ教にはボコ(呪術師)よばれる術者がいて、彼らは腐敗する前に死体を墓から掘り起こし、死者の名前を連呼することで死体を蘇られる力があると信じられていた。
そして蘇った者の両手を縛り、農園や工場に奴隷として売り渡す。
死者の魂は壺の中に封じ込められて、蘇った人は永遠に奴隷として働かなくてはならない。
・1915年アメリカがハイチを占領。その結果、ハイチの文化がアメリカに伝わる中で「ゾンビ」というモンスターがうまれる。
・1932年、世界初のゾンビ映画「ホワイト・ゾンビ/恐怖城」が公開される。ゾンビの設定は先述したハイチの伝承に基づいているため、ゾンビは主人に従い、人を襲ったりはしない。
・1954年、アメリカのSFホラー作家リチャード・マシスンが小説「アイ・アム・レジェンド」を発表。
ストーリーは全世界の人間が吸血鬼となってしまい、たった一人になった主人公が生きるために吸血鬼たちと戦うものであり、大きな話題を呼んだ。
・上記の小説に触発された「ジョージ・A・ロメロ」は「ナイト・オブ・ザ・リビングデッド」を発表。カルト的な人気を呼んだ。
人間を襲うモンスターは登場するが、作中では「ゾンビ」という言葉は使われない。
・1978年公開された、ショッピングモールを舞台にした映画、「ゾンビ」(原題『Dawn of the Dead』)が発表される。今作にて基本的なゾンビの設定が確立される。つまり
噛まれた人間もゾンビになってしまう
脳を破壊しない限り動き続ける
・日本でゾンビが認知されるようになったのは1980年代前半。家庭用ビデオデッキが普及したことが一因にある。
・1996年にゲーム「バイオハザード」が発売される。全世界で9100万本の売り上げを記録し、このゲームのヒットにより米英合作映画「バイオハザード」が公開。「ゾンビ映画」というジャンルが確立され、基本的な設定は踏襲しつつもさまざまな要素を取り入れたゾンビ映画が制作されるようになる。
感想
ゾンビについて調べたことをメモしていたら思った以上に長くなってしまいました。
さて映画の感想の前にゾンビ設定や今作の登場人物たちについて説明していきます。
ゾンビ設定
発生原因:
不明。豚コレラ?とかが原因っぽい。というかもう発生原因なんて観る人も気にしていないのかな。
特性
・噛まれた人はゾンビになってしまう
噛まれた部位に依存するのだろうけど噛まれてもすぐにゾンビになるわけではない。
主要な登場人物がゾンビになるときはしっかりとお別れをする時間が設けられている。なんでだよ。
・視力が悪い
トンネルに入って車内が暗くなると人間を感知できなくなってしまう。しかし目が悪いわりには主人公たちを追いかけるときに障害物はきっちりよけるし、どのゾンビも転ばない。なんでだよ。
・パワーはかなり弱い
ガラス扉も破壊できないし、一対一なら普通に戦える。この設定は賛成!だいたい肉体的には死んでるのに常人以上のパワーがでるっていう設定はどうにも違和感があるから。
儒教思想について
僕は韓国ヘイト感情は一切ないのであしからず。
ところで僕の友人(韓国人)が映画「千と千尋の神隠し」を観たときにあるシーンで泣いてしまいました。それはどのシーンだと思います?
韓国って儒教思想が強いらしく、その思想とは
年長者を敬い
家族を大切にする
という教えをベースした考え方です。
だから千と千尋の神隠しの上記画像のシーンを観た友人は、豚にされた両親の姿をみて「まじで怖ぇ・・・オマー!」と言って震え上がっていました。(オマーは「お母さん」の意味)
さらに儒教には五常という概念があり以下のようになっています。
仁・・人を思いやる
義・・恩に報いる
礼・・仁を具体的な行動として表したもの
智・・学問にはげむ
信・・親睦を深める
今作「新感染」はこの五常を、「しっかり実行しようぜ!」っていうメッセージが込められているように思います。
感動の詰め合わせ! 都合のいい登場人物たちが都合よく集まる!
今作は「あらゆる人を感動させる」ことを明確に意識しています。
「どうしてそんな見方でしか映画を観ることができないの?性格悪い!」
と言われてしまいそうですが、登場人物たちのプロフィールをみていけば僕がそう思うのも納得してもらえるはずです。
**主人公サイド**
①主人公・・仕事人間。妻と別居中。娘の気持ちが分からない。
②娘・・別居している母に会いたいが、もちろん父も好き
③母・・主人公の母親。息子と孫が心配
**主人公サイド以外**
④出産間近の夫婦
⑤高校生カップル(まだ付き合ってはいないっぽい)
⑥偉い人(バス会社の常務)
⑦高齢姉妹
⑧ホームレスっぽい格好をした男
どうでしょう?
なんとなく上記メンバーの説明を聞いただけで、登場人物たちが作中でどんな動きをするか予想できませんか?
上記のメンバーたちは死んでいくわけですが、死ぬときにはみんな感動的な言葉を残して死んでくれます。
⑤の高校生カップルなんかは一体どこに感情移入すればいいのかよく分からないまま、なんとなくいい感じに二人そろって仲良く死にます。
ちなみに登場人物のなかで僕のお気に入りは⑧のおっさんで、それまで主人公サイドの足をさんざん引っ張った挙げ句、最後には
「いけっ!はやくいけ!」
という謎の勇気をみせて死にます。
正直キャラの性格が定まっていなかったのだろうなと思います。
⑤と⑦の登場人物は不要だったかなーというのが個人的な感想です。登場させるんだったらもうすこしエピソードを描写して、感動ポイントを作ってもらわないと。
まとめ
作品の質的にはそれほど低くない。というのが僕の感想です。
しかし記事に書いているように感動シーンをいろいろ無理に詰め込みすぎているためそのひとつひとつがスカスカで、それほど感動できなかったなという印象ですかね。
そもそもゾンビ映画なのか
ゾンビが登場する、家族の絆を描いた映画なのか
監督はどっちを描きたかったのだろう。いずれにもせよ描写が中途半端でしたね。
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インド版 クイズミリオネア? 「スラムドッグ$ミリオネア」
365日映画カレンダー 9月14日 「スラムドッグ$ミリオネア」
日本で「クイズ$ミリオネア」という番組が放送されていたのを知っていますか?
司会は「みのもんた」で「ファイルナルアンサー?」と回答者に尋ねるシーンは当時話題になりましたよね。
日本の番組だと思っていたのですが実際にはイギリスやインドで同じような番組がすでに放送されており(一番はじめはイギリスっぽい)、要は輸入された番組のようです。
さて、僕が今回観た映画「スラムドッグ$ミリオネア」は簡単に言ってしまえば、あるひとりの若者がインド版クイズミリオネアに挑戦する物語です
概要
インドの大都市ムンバイのスラム街で生まれ育ったジャマールは人気クイズ番組に出演することになる。
ジャマールは次々とクイズに正解していき、ついに最後の一問にまで到達するのだが無学でスラム出身であるジャマールに不正の疑いがかけられ、彼は警察に連行されてしまう。
警察の取り調べの中、彼は自分の生い立ちとその背景を語るのだった。
感想
ミリオネアの簡単なルールについて
そもそもクイズ$ミリオネアのことを知らないという人もいるかもしれませんのでクイズのルールを説明しておきます。
簡単に言ってしまえば4択の問題を解答者が答える、という形式です。
映画では9問正解すればよく、番組名がミリオネア(億万長者)であることから分かるように成功報酬として多額の賞金がもらえます。
賞金は2000万ルピー。
日本円に換算すると何円くらいかなと思って調べたところ
1,378万929円(2019年9月13日時点)
ということが分かりました。まあ高額には違いないですね。
あと回答者にはライフラインという3種類の救済措置があります。
・オーディエンス・・スタジオにいる観客を対象にしてどれが正解かアンケートをとることができる。一般正解率が高い問題なら有効ということ。
・50:50(フィフティーフィフティー)・・4択を2択まで絞れる。
・テレフォン・・知人に電話ができる。しかし制限時間が決まっていること、問題文から読み上げる必要があることから意外に使えない。
クイズ$ミリオネアについての説明はこれくらいあれば十分でしょう。
それではさっそく具体的に映画の感想についてです。
映画の開始早々から嫌な予感しかしない
彼はあと一問でミリオネア。なぜ勝ち進めた?
A インチキをした
B ツイてた
C 天才だった
D 運命だった
チック♪タック♪ チック♪タック♪
映画冒頭でいきなり上記のようなクイズが出題されます。
さて、この質問に対してみなさんはどう思いましたか?
それともテレフォンをつかいますか?
え?必要ない?
そうですよね。
もし僕がクイズの解答者だったら1秒で「ファイナルアンサー」って言います。
だって
答えはどうせ D 運命だった
っていうつもりなんでしょ。ため息が出そうです。
これから先を観るべきか正直迷いました。
しかしぐっとこらえて鑑賞を続行することに。
なぜなら今作は第81回アカデミー賞で8部門受賞というすばらしい評価を受けた作品だからです。
まさかそんな作品が映画開始2分くらいでこれから起こる物語を「運命でした」という言葉一つで片付けるはずがありません。
そうだ、そうであってほしい。
祈るような気持ちで、僕は映画の続きに注目することにしました。
さすがアカデミー賞受賞作!
冒頭では不安しかありませんでしたが序盤が終わったころには僕はすっかり映画の世界に引き込まれていました。
主人公ジャマールは大人気クイズ番組に出演し、あと一問正解すれば最高賞金獲得というところで不正の疑いをかけられ警察に連行されます。
警察官はジャマールのことをかなり疑っており
「おまえみたいにスラム出身のやつがクイズに答えることができるわけない。不正したんだろ!?」
と言ってののしりますが
それに対してジャマールは「僕は答えがちゃんと分かっていた」と反論します。
学者などの知識人が挑戦しても全問正解できなかったクイズを、どうしてスラム出身の字の読み書きもよくにできない少年が答えることができたのか?
それは
ジャマールは実際に様々な経験することで、知識として蓄えていったからです。
例えば
ラーマ神の描写で彼が右手に持つ物は何でしょう?
という問題があったのですが、ジャマールはその答えを自身の経験から導きだします。
しかしそれは彼にとってひどく悲しい経験でした。
ラーマ神とはヒンドゥー教の神で(ちなみにジャマールはイスラム教徒)、彼が住む地域でヒンドゥー教とイスラム教の宗教争いがありジャマールの母親はヒンドゥー教徒に殺されてしまいます。
暴走したヒンドゥー教徒から逃げるジャマールはその途中、「ラーマ神」の姿した少年が「弓と矢」を持っているのを目にしたのです。そのときの経験のおかげでジャマールは見事クイズに正解します。
経験は知識に勝る、っていうのがいいですね。本当の意味で知識を得るためにはただ本を読むだけではダメで、実際に体験して自分の肌で感じてはじめて知識は自分の体に蓄積されていくのでしょう。
こういった人生の教訓を示してくれる映画は個人的に好きです。
今作はこのようにクイズの問題が出題される→問題にまつわるジャマールの過去が明かされるという構成になっていて、インド(特にスラム街)がかかえる社会問題などが浮き彫りにされてその内容はとてもショッキングでした。
日本に住んでいる僕たちでは想像もできないような貧しい生活をするなかで、力強く生きるジャマールの姿には心うたれました。
しかし・・・
ジャマールの過去を説明するために用意されたんじゃないの?っていう問題
がバンバン出題されます。(笑)
ジャマールが不正をしたというより、クイズの出題者を疑うレベルです。
まさか本当に映画のオチは「運命だった」なんて言わないだろうな・・・
と心配しながらも、そこはアカデミー賞受賞作、ぜったいに最後は大ドンデン返しで僕を驚かせてくれるにちがいない!
そう思いながら映画はラストへと向かいます。
そして予想通りの残念なラスト
彼はあと一問でミリオネア。なぜ勝ち進めた?
A インチキをした
B ツイてた
C 天才だった
D 運命だった
結論から言ってしまえば
答えは D 運命だった でした。(笑)
いやー本当に残念ですねー。
だってそれまでの問題はジャマールの「体験」を通して解答していたのに
ラストの問題をジャマールは
「なんとなくそうだと思った」
で、正解、終わり、なんてひどくないですか?
この問題を解くにあたってヒロインの女の子との恋のエピソードが進むわけですが、結局その彼女にテレフォンを使って助けを求めるシーンでは彼女に
「ごめん、分からない(笑)」
と言われ、しかもヒントらしきヒントもまったくもらえません。
それで最後はカンで解答して「全問正解する運命でした~ははっ!」なんて・・これまでの問題はなんだったの?って感じです。
今作に関してはラスト以外は本当によかっただけに悔やまれます。(あとインド独特のじゅわ~わ~ん♪みたいな音楽はまじで無理だったけど)
しかし残念なラストに悲観している僕に、さらなる追い打ちが待っていました。
今作はインドを舞台にしています。じゃあインド映画と言ったら?
インド映画ってどうして踊るの?
なぜ踊った?(怒)
ちなみに今作、イギリスで制作された映画ですから。
インド映画 なぜ踊る
で検索してみましたけど明確な理由はないみたいですね。
インドは多言語文化だからダンスだったら言語にかかわらず楽しめるっていう理由が僕的には一番しっくりきましたけど、実際はどうなんですかね。
まとめ
途中まではすごくいい感じにストーリーが進んでいたのに、ラストはかなり残念な展開。
あとアカデミー賞受賞作の傾向がなんとなく分かってきたような気がする・・。
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世界よ、これが日本のライトノベルだ 「オール・ユー・ニード・イズ・キル」
365日映画カレンダー 9月13日 「オール・ユー・ニード・イズ・キル」
ラノベとは軽い文体でわかりやすく書いた若者向けの娯楽小説のことを指します。
普通の小説とラノベの境目がどこにあるのかは分かりませんが、特最近だと「異世界に転生する」という、いわゆる転生ものが非常に人気で、本屋に行ってみるとラノベ専用コーナーなんてものもあるから一定層にはかなり需要があるのでしょう。
さて、今回僕が観た映画「オール・ユー・ニード・イズ・キル」はなんと、日本のライトノベルを原作にして製作されているのだとか。(原作者は桜坂洋の「All You Need Is Kill」)
しかも製作された映画の主演はミッションインポシブルでおなじみのトムクルーズ!
まじか、すごい、すごすぎるよライトノベル!
ライトノベルといえばオタクくらいしか読まないのだろうと思っていたのだけど、その認識を改める必要がありそうですね。
概要
舞台は「ギタイ」と呼ばれるエイリアンの侵略によって壊滅的な打撃を受けている近未来の地球。
人類は敵の圧倒的な戦力の前に滅亡の危機に瀕していたが、「ヴェルダンの女神」の異名で知られる英雄リタ・ヴラタスキの活躍によって反撃の糸口をつかんでいた。
そんなある日、軍属の報道官であるウィリアム・ケイジ(トムクルーズ)は戦場の現地取材の任務を命令されるが、報道官の立場を利用してそれを拒否しようとする。
その結果、将軍から反感をかったウィリアムは地位を剥奪された挙げ句、最前線に送られてしまう。
感想
さすがラノベ原作!タイムループの能力を得た最弱主人公が死にまくる
今作の最大の魅力は何かと聞かれればたぶん僕は次のように答えますね。
それは・・・
トムクルーズがみじめに、かっこわるく、何度も死にまくるところ
僕は映画の事前情報がまったくない状態で見始めたので最初はとても驚きました。だって
映画開始20分くらいでトムクルーズがあっさり死ぬから
僕はいつも通りかっこいいトムクルーズが大活躍する映画なんだろうなとわくわくしながら映画を観ていたわけですが、いつものかっこいトムどこへ行ってしまったのか今作のトムはとにかく根性なしのへたれ野郎です。
トムが演じるウィリアムはわけもわからず敵地へむかう戦闘機に乗せられ、武器のセーフティ解除の方法も分からないまま敵エイリアン「ギタイ」の襲撃にあいます。
想定外の敵の猛攻撃により味方は次々と殺されパニックに陥りながら必死に逃げるウィリアムですが周囲は完全に敵に包囲されてしまい絶対絶命のピンチに陥ります。
ちなみに「ヴェルダンの女神」なんていかにも中二病的な通り名で呼ばれていた、「絶対最後まで生き延びるキャラ」と思っていた英雄リタ・ヴラタスキもめちゃくちゃあっさり死にます。
あれ?この映画大丈夫?
ウィリアムは逃げまといながら、なんとか敵の一匹を倒すことに成功しますがそのあとすぐに殺されてしまいます。
「あれ、映画おわっちゃうじゃん・・」
ところがこの映画はここからがおもしろい!
実はウィリアムが死ぬ直前に倒した敵はギタイのなかでも「超レア」な「アルファギタイ」と呼ばれる種類のもので、その血を浴びたことにより「経験したこと」を保持したまま過去にワープする「タイムループ」の能力に目覚めます。さすがライトノベルが原作だけあっていかにもそれっぽい設定ですね。
タイムループの能力を得たウィリアムは「敵地に向かうまでに過ごした2日間」という、なんともめんどくさい期間を何度も体験します。ウィリアムが得たタイムループ能力の特徴として「経験したこと」を引き継げるので、彼は必死に味方たちに次のようなことをいいます。
「敵がたくさん待ち伏せしている!これは罠だ!俺を信じてくれ!俺は未来が分かるんだ!」
その結果どうなるかというと
「味方からドン引きされます」
まあそりゃそうですよね。僕のまわりでこんな人がいたら評判のいい病院を紹介するでしょう。
再び戦場へと行くはめになったウィリアムは、タイムループで何度もみた光景を目にしながら敵に殺されてしまいます。そして2日前にまた戻るウィリアム。
しかし何度も死ぬうちにウィリアムはこれから起こる出来事をすこしずつ記憶していきます。
敵がどの方向から来て、どんな攻撃をするかをすべて知っているので脅威を回避しながらすこしずつ未来を進めていくのですが、この過程がすごく面白かったですねー。
目覚める→死ぬ→目覚める→死ぬ・・という無限ループを繰り返すうちに段々たくましくなっていくウィリアムが非常にいい味をだしていました。
「最初は弱かった主人公」がすこしずつ強くなっていく展開って、なんだか主人公を応援したくなっちゃんですよね。
話はすこしそれてしまいますが、AKBを売り出すとき秋元康は「普通の女の子がアイドルとして成長していく姿」をファンに届けることを心がけたそうです。
今作の主人公もすこしずつ成長していきます。最初は「かっこわるいトムクルーズ」ですが、死にまくった結果、ラストに近づくにつれてたくましい表情になっていき仲間からも一目置かれる存在になったトムは僕たちがよく知っている「かっこいいトムクルーズ」です。
やたらとかっこいい敵のデザイン!でも設定が無駄に凝っていて理解しにくい
まず、敵エイリアンである「ギタイ」のデザインはシャープで本当にかっこいいです。僕のイメージ的にはもののけ姫の祟り神みたいなイメージ??
また動きがかなり俊敏で、たった一体現れただけでも「もうこれだめだろ・・」という絶望感があってよかったです。ギタイとの戦闘シーンは大迫力で、これは絶対に映画館で観るべきシーンだなと思いました。
まあ敵のデザインがかっこいいのは素晴らしいことだと思うのですが、問題なのは
敵の能力設定
です。
微妙に分かりにくいうえに作中ではそれほど言及されないので初見の人はきっと映画をみたときに「どういうこと?」ってなると思います。
ざっくり説明すると・・
①敵は3種類いる
○ギタイ・・・一番多いタイプの敵
○アルファギタイ・・超レアな敵。何万体に一体しかいない。主人公ウィリアムが死ぬ間際に倒したのがこいつ。
○オメガギタイ・・一体しかいない。例えるなら人間の脳のような存在で、オメガギタイがすべてのギタイに指令を送っている。
②敵の能力
アルファギタイが死ぬと、オメガギタイがそれを感知して時間を戻すことができる(つまりタイムループ能力が発動する)アルファギタイはタイムループのトリガーみたいな存在で、その引き金をひくのがオメガギタイっていうイメージですかね。
・・・・は????(笑)
ってなりますよね。説明が下手ですいません
この能力があるとなにがうれしいのかというと、時間を戻して
人類がどういう作戦で攻めてくるかを学習しようとしているんですよね。
何回かタイムループを繰り返して敵の行動パターンを読んで、その裏をかいて攻撃しようということです。普通に戦っても人類は絶望的なのに、さらにこんな能力まで使ってくるなんてまさに「チート」です。
しかし敵側にも想定外なことがあって、アルファギタイの血を浴びた人間はタイムループ能力に目覚めてしまうのです。これが要因でウィリアムは能力にめざめてしまうわけですが、僕の中で疑問があって
・オメガギタイがタイムループを管理しているならウィリアムが死んだときはタイムループ発動しなければいいんじゃないの?オメガギタイにはそれが判断できない?
謎は残りますが、作中ではなんとくふわっとしたノリのまま進みます。
(ちなみに、敵の能力について「ジョジョの奇妙な冒険」を思い出したのは僕だけじゃないはず)
最後はやっぱり王道ヒーローもの
へたれだったウィリアムも幾度となく死を経験したことにより、最後はかっこいい姿になります。ギャップ萌えなんて言葉が世間にはありますが言ってしまえばそんな感じでっす。
やっぱりかっこいい役のトムクルーズは絵になります。
まとめ
最初は貧弱だった主人公がすこしずつ成長していくという構成は非常に面白かったです。
ただ敵の能力の説明をもうすこしわかりやすくしてほしかったですね。能力を分かっているかによって物語のオチへの理解度も変わってくると思いますし。
あとウィリアムが「ふぁっ!」みたいな声を発してすぐに死ぬのが個人的にはツボでした。
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