エンジニアが映画評論家になるブログ

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エンジニアをしている普通のサラリーマンが、映画評論家になってどや顔で映画評論するまでの軌跡を綴るブログです

サラリーマン? 大名の転勤物語 「引っ越し大名!」

365日映画カレンダー 9月1日

引っ越し大名!(2019年8月30日公開)

監督:犬童一心

上映時間:120分

 

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概要

藩主である松平直矩(及川光博)は幕府に姫路から日田(大分)へ国替え(引っ越し)を言い渡される。しかし引っ越しにはすべての藩士とその家族を全員移動させねばならず、また莫大な資金が必要となり、とてもではないが引っ越しができるような状況ではなかった。

そんな中、書庫にこもりっきりで人と話すのも苦手な侍である片桐春乃介(星野源)が引っ越しプロジェクトの担当者に抜擢される。

移動人数10,000人、移動距離600Km、そして予算はほどんどなし。

春乃介は知恵を絞り、また仲間の協力を借りてこの一大プロジェクトを成功させるために奮闘するのだった。

 

感想(ネタバレなし)

こんな人におすすめ!

歴史についてある程度の知識があると映画の楽しさも倍増すると思う。歴史好きにはおすすめ!

まず引っ越し大名=星野源 と思っていたけど実際にはそうではなくて、藩主である松平直矩が引っ越し大名というあだ名をつけられていたようです。

松平直矩は歴史上に実在する人物であり、生涯で7回も引っ越しを命じられ、最終的には莫大な借金を抱えていたのだとか。松平直矩なんてはじめて聞いたよ・・

 

ところで僕がまず映画の冒頭で思ったのは、そもそも

「なんで幕府は国替え(引っ越し)を命じたの?」

っていうのがあって、一応説明っぽいナレーションは入るのですがいまいちよく分からなくて映画が終わったあとに調べてみたところ

 

・幕府の支配力を強めるため

・地域と藩主がつよく結びついているケースもあるので、引っ越しによりその結びつきを弱めるため

 

という理由によるらしい。

つまりは反逆されないように無茶な引っ越しを命令して藩の力を弱めさせようとしていたってことのようです。

しかも作中の引っ越しは幕府の人間が「嫌がらせ」的に命じたものであり、昔の人たちもいろいろ大変だったんだなという気持ちにさせられます。

こういった歴史の背景を知っていると今作の映画はより楽しく観ることができるのではないでしょうか。

しかしそうでない人(僕も歴史はほとんど分からない)でもちゃんと楽しめるように所々ナレーションが入るので、時代劇映画ではあるけどどんな人でも楽しめる映画となっています。

よかった点

作品の雰囲気としてはやわらかくて優しい作品だった。

 

車もないような時代に大人数かつ長距離の大移動をみんなで知恵と勇気をふりしぼって乗り越えてゆく様もよかったです。

特に引っ越しの予算がないので「なにかを捨てなければならない」と春乃介が気付くシーンがあって、「なにを捨てるか」について葛藤し、決断する春乃介は男らしくてよかったかな。 

主演の星野源は正直「逃げ恥」のキャラとそう変わらないような気もしますが、最初は根暗でひきこもりでさらに童貞だった春乃介が苦難を乗り越えるなかで最後には精神的に大きく成長する所も本作の見所だと思います。

 

あと主演の役者に関して、特にいいキャラを演じていたなと思うのが高橋一生

腕の立つ武士という設定だったけどいつもニコニコ笑顔でかなりほっこりした。

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高橋一生の笑顔がほんとうにすてきだった

感想(ネタバレあり)

よくなかった部分

これは完全に好みの問題になってしまうけど、今作のマイナスポイントとしては

盛り上がりにかける

という点が気になった。時代劇で人間の生き様を描いた映画だからアクション映画のような盛り上がりは全く期待していなかったけど、もうすこし「主人公が窮地に陥るシーン」をシリアスに描いてよかったと思うし、最後に反逆者たちが襲ってきたシーンも「一応」程度の微妙なアクションでなんだか陳腐だった。

大体、映画のおおまかな展開として

 

①春乃介が引っ越し担当に抜擢される

②悩む

③引っ越しをする

④無事おわる

 

っていう展開だから、起伏をつけるところが②、③しかない割に、しかも②ではいろいろ葛藤はあるけどみんな「幕府の命令だし、しょうがないよな」っていうのが前提にあってさくさくと解決に向かってしまう。春乃介がみんなから不信感を抱かれるシーンとか「おまえのせいで!」みたいなシーンがもうすこし深刻に描かれていてもよかったと思う(一応そういうシーン自体はあるし、春乃介はそれによってすごく傷つくのだけど・・・・割とすぐに立ち直ってしまう)

 

つまり、映画の冒頭 - 映画の終わり までの盛り上がりの起伏が非常に穏やかすぎて(ゆっくりと盛り上がっていく感じ)、特に若い人は観るのが結構苦痛なんじゃないかなという感想をもった。

 

映画のターゲットとしては一体どの層を狙っているのだろう。

30代~くらいをターゲットにしている?(僕が映画を観に行ったときは年配の方々が多くて、しかもよく分からんシーンで館内が笑いにつつまれた・・)

 

僕個人としては展開の起伏が大きい映画が好きなので、本作のようなゆったりとしたテンポの作品はすこし苦手だった。

僕は「万引き家族」をみたときも実は同じような感想を抱いていて、年齢を重ねてものの見方が変われば今作なども深く味わって楽しむことができるのだろうか?いや、できないような気がする。笑

 

まとめ

作品自体は丁寧につくられていると思うが、対象年齢は高めな気がする。デートとかで一緒に観るような映画ではないが、鑑賞後はあたたかい気持ちにはなれるのではないでしょうか。

 

ブログ作成時間:20分