ハリーポッターのダニエルラドクリフがおならをする死体役を演じる? 映画感想「スイス・アーミー・マン」
365日映画カレンダー 9月17日 「スイス・アーミー・マン」
スイスアーミーナイフとは日本におけるいわゆる十徳ナイフのことで、今作は
「十徳ナイフのような便利な機能をもった死体がいたら?」
という、凡人では一生思いつかないようなアイディアがベースになっています。
監督がいわく「死体に乗って、無人島から脱出するシーンが撮りたかった」そうです。
なにを間違えればそんな発想が浮かび、さらにそれを映画にしようと思うんですかね?
ちなみにハリーポッターでハリー役を演じたダニエルラドクリフが死体役を演じているのですが、死体がオナラをするシーンを脚本で読んだときに「これだ!」という意味不明のインスピレーションを受けて、出演を引き受けたそうです。
みんなバカです。(笑)
概要
無人島に流れ着いたハンクは絶望の末、首を吊って自らの命を絶つことを決心する。
自殺する直前、砂浜に男性が倒れているのをみつけたハンクはいそいで男のもとへ駆け寄るが、すでに男に息はなかった。
ふたたび絶望し自殺の続きをしようとするハンクだったが、死体からオナラのような音が聞こえてくる。
ハンクは不審に思いながらも自殺を一旦中断し、死体へと近づいてゆくのだった。
感想
とりあえずおバカなシーンだけでも十分楽しめる映画
いやー久しぶりに映画を観て爆笑できました。
映画の冒頭からバカシーンの連発でどれだけつっこんでもたりないくらいでした。
まずいきなり
「遭難している」
「一人で孤独に死にたくない!」
なんてメッセージが書かれた瓶が海にうかんでいるのですが「ああ、遭難している人の物語なんだね」っていうのが一発で分かってステキでした。(笑)
まさに状況説明するためだけのシーンという感じで違和感バリバリでさっそく笑ってしまいましたね。分かりやすくていいと思いますけど、もう少し、なんというか……オシャレに表現できなかったんだろか。
でも
「この映画は何かやってくれそうだ」
という謎の期待が僕の中で一気に高まりました。
さて、ハンクは砂浜に打ち上げられていた男性がすでに死んでいると分かり落胆し、再び自殺をしようとするのですが そのとき突然オナラの音が聞こえます。
死んだ人間(特に水死体)って体内にガスがたまってお腹が膨らむっていうじゃないですか、だからこのシーンを観たとき、そういう意味なのかなと思っていたのですが・・・
違いました。
ちゃんと死体がオナラをしていたのです。
しかもそのオナラの威力はすさまじく・・・
「まじかよ!こりゃすげぇ!」
と言って死体をジェットスキーのように巧みに操るハンク。
ダニエルラドクリフのこの虚ろな表情・・最高です。
なんやかんや、オナラパワーで無人島を脱出するのですがハンクと死体がたどり着いたのはまたどこか見知らぬ海岸でした。助けを求め、ハンクは森の奥へと入っていきます。
便利すぎる死体!
自分たち以外に人間がいないのではないかという不安にかられ、ハンクはパニックになります。そんなとき雨がふってきたのでハンクは洞窟の中で雨風をしのぐのですが、ひとりきりで孤独に耐えかねたハンクは死体に語りかけます。
すると・・
「メ、、、、メニー」
そうです。
そうなのです。死体がしゃべったのです。
さらに自分の名前は「メニー」であると、自己紹介してくれるではないですか。
なんということでしょう。
しゃべることで孤独な気持ちが少しだけ解消されたハンクはメニーと夢中になってしゃべります。メニーはこの世界のことを何もしらないため、ハンクはひとつひとつ丁寧にさまざまなことをメニーに教えていきます。
死体の便利機能はしゃべるだけにとどまりません。
・口から ゲロ 飲み水をだしてくれる!
*これで水には困りませんね
・エロ本をみせるとメニーの股間がそそり立って、方位磁石の代わりになったり
*あまりエロ本を見せすぎると立たなくなるので注意が必要です
・死後硬直を利用して(笑)腕が斧の代わりになったり
*これで木を切って簡易的な家をつくったりします
・石を口につめるとまるでそれを銃弾のように発射できたり
*動物を仕留めることが可能に
これら以外にもメニーは次々と新しい機能を充実させてゆき、ハンクはそれを活用して次第に遭難生活が豊かにしてゆくのでした。
つっこみポイントとしてはメニーが便利すぎて、最初は遭難して死にそうだったのに途中から今の状況を楽しんでしまっているところですね。
あと森の中には
「あるわけないだろ」
と言いたくなるような物が都合よく落ちていて、それらを活用してハンクとメニーはめちゃくちゃ楽しそうに遭難生活を送ります。
作品に込められたメッセージは意外に深い
メニーのぶっとんだ便利な能力を観るだけでも十分映画を楽しむことができるのですが、真面目なシーンも意外にあって、さらにそういったシーンはメッセージ性があってよかったです。
まず今作は
「死を覚悟した主人公」と「死体」という真逆の属性をもつキャラクターによって物語が進んでいく点がおもしろいですね。
死体であるメニーは何も知らないので、ハンクは彼にこの世界のことを教えてゆくのですが、その過程で「自分が大切にしているもの」を見つめ返すきっかけになっているのもよかったです。
自分の悩み、特に心の奥底に抱えた悩みって簡単に人には相談できないと思うんですよね。
ハンクの場合だったら父との関係のことや、一方的に片思いをしている女性について。死体であるメニーはなんでも真剣に聞いてくれるため、ハンクはすこしずつメニーに心を開くようになっていきます。
そしてメニーも次第にこの世界や人間について学習していき、核心をついたような発言をしてハンクを感心させたりもします。
死体が生きている人間に活力を与えているっていう構成は非常にいいと思いました。
でもやっぱりバカ映画
「このシーン、すごく綺麗だな」って思ったすぐあとには「熊に食われそうになったり」して、とにかく感動と笑いの振り幅がものすごいです。
熊に食べられながらのんきにメニーと会話をするシーンでは悔しいですが爆笑してしまいました。
こんな具合に基本は「笑い」でたまに感動を入れつつも、映画のラストは一応感動的な感じで終わるのですが、主人公の父親が
「い、意味がわからん・・・・」
と、口をぽかーんとしながらと言うシーンがあって、まさに映画を観ている人の気持ちを代弁しているかのようです。
そうなんです、なんとなくいい感じに映画は終わるんですが、やっぱり
「意味がわからん」
のですよね。この映画。
感動させたいのか笑わせたいのか、どっちなの?って聞きたくなります。
余談になりますが今作を観たとある映画評論家は「あまりにもくだらなさすぎて」映画を観ることを放棄したそうです。
そうしたくなる気持ちもわかります。
しかし、今作は「この次はどんな展開になのだろう」とわくわくしながら観ることができて全体としてはとてもいいおバカ映画だったと思います。
まとめ
毎日通勤中にNetflix で映画を観ているのですが、不覚にも車内で笑ってしまいました。
最初、死体役の俳優があのダニエルラドクリフに似ていたので「あれ?似てるなー」と思っていたらまさかの本人でした(笑)
ちなみに映画の撮影中、ダニエルラドクリフはどれだけバカなシーンでもめちゃくちゃ真摯な態度で撮影に臨んだのだとか・・・。
真面目か!
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