エンジニアが映画評論家になるブログ

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エンジニアをしている普通のサラリーマンが、映画評論家になってどや顔で映画評論するまでの軌跡を綴るブログです

泣ける! アンジェラアキの名曲「手紙」を歌う、少年少女たちの物語 映画感想「くちびるに歌を」

365日映画カレンダー 9月30日 「くちびるに歌を

 

 

youtu.be

 

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ガッキーは割とクールで淡泊な先生を演じる

 

[:contents] 

おすすめ度

おすすめ度

 

*おすすめ度は1が低評価。5が高評価。あくまでも独断と偏見による評価です

ざっくり感想

15歳の自分にあてた手紙を通して、登場人物たちが自身の悩みに立ち向かう、少年少女たちの一夏の思い出を描いた物語。舞台となる五島列島の景色もとても美しく、登場人物たちの抱える葛藤をきめ細やかに美しく描けていて良作だった。

あと、今作での役柄のゆえにだと思うけど、新垣結衣はそれほど可愛いと思わなかった(笑)

 

概要

 舞台は長崎県五島列島のとある中学校。

合唱部顧問をしていた松山ハルコは産休にはいるため、かわりに同級生で元プロピアニストである柏木ユリが一年間の期限付きで講師をつとめることになる。


もともと女子部員しかいなかった合唱部にユリ目当ての男子部員が入部するが、NHK国学校前音楽コンクールを控えているため女子部員たちは焦っており、真面目に練習しない男子部員と軋轢が生じる。

そんななか、ユリはコンクールの課題曲「手紙」の歌詞の理解を深めるために、将来の自分に向けて手紙を書くという宿題を課すのだった。


感想

原作は中田永一による「くちびるに歌を」であり、僕は中田永一の大ファンなので映画を観るにあたって小説の世界観がどのように再現されているのかを気にしながら映画を観ました。感想としてはキャラクターひとりひとりが細かく描かれていて原作を読んだコトがある人でも安心して観ることができる完成度だと思います。

 

印象的だった登場人物について

今作で一番いい味を出していたキャラクターは桑原サトルという少年で、彼は「ぼっち上級者」なわけですが、その内面には誰にも話すことができない悩みを抱えています。

ちなみに下田翔太という俳優さんが演じていて、見た目からして弱々しい外見をしているのがよかったですねー。

 

今にも泣き出しそうな顔をしていて、サトルのイメージ通りって感じ。(下の画像だと前から三番目の男の子)背もやたら小さいし、映画が違えば「絶対にいじめられっ子だろうな」という弱々しい外見をしています。

 

さらに加えて、声変わり前なのか、女子みたいに綺麗な声で歌うシーンもあって、サトルの繊細さがとてもよく表現出来ていたと思います。

 

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舞台は長崎県五島列島。行ったことがないので是非行ってみたい!


さて、そんなサトルですが内面に抱える葛藤は中学生にしてはあまりにも大きすぎて、自分ではどうしようもできないものです。

 

サトルの悩み、それは「自分はなぜ生まれたのか?」についてです。

サトルは

 

自分は、兄の世話するためだけにこの世に生まれてきた

 

と本気で信じています。

 

サトルの兄アキオは生まれついての自閉症であり、両親は自分たちが死んだあとに誰もアキオの面倒を見る人がいなくては困るからという理由で、もう一人子どもをつくることを決心します。

 

う、うーん・・・・すっごくヘビィな悩み。

中学生にはちょっと重すぎる内容ですよね・・・

 

僕自身も次男であり兄がいるわけですが、こんなことを両親から聞かされたら絶対にいやだろうなぁ。

 

さて、作中ではサトルたちが所属する合唱部は「NHK全国学校音楽コンクール」に出場するわけですが、コンクールには課題曲があってそれはアンジェラアキの「手紙~拝啓十五の君へ~」です。

 

曲の理解を深めるために新垣結衣演じる柏木先生は「未来の自分へ向けて手紙をかく」という宿題を課します。

 

先述したアンジェラアキの「手紙」という曲は「15歳の"僕"が悩みを未来の自分に宛てて書く」という内容の曲で、サトルは"今"自分が抱えている悩みを将来の自分に宛てた手紙の中に綴るのですが・・・・それがあまりにも切ない内容となっています。

 

自分の人生は決まっています

僕の創造主である父の意思のままに

でも、たまに、みんなのことがうらやましくなるのです

生きている理由を、これから発見するため、島を出て行くみんなのことが

僕の出生のように、計算ではなく、純粋な愛情によって生まれてきたみんなのことが

 

一生兄の世話をして生きていくことを覚悟しながらサトルはこの文章を書いているわけですが、中学生ということもあり、まだ「迷い」が文面から読み取ることができます。

15歳の時点で自分の未来が確定しているってあまりにも残酷すぎるし、悲しすぎると思いませんか?

 

このようにめちゃくちゃ暗い一面を持っているサトルですが、部の仲間たちと「合唱」をしていくなかですこしずつその心境が変化していくところが今作の見所だと思います。

 

一番印象的だったシーン

やっぱり最後の合唱シーンですね。

 

歌詞そのものが作品の雰囲気にすごくあっていてよかったし、役者さんたちが涙ぐみながら歌っているシーンもグッとくるものがありました。やっぱりこういう青春物っていいなーって感じがしますね。

 

「手紙」の歌詞の中でも特に気に入っている部分があって

 

今 負けそうで 泣きそうで 消えてしまいそうな僕は

誰の言葉を信じ歩けばいいの?

ひとつしかないこの胸が

何度もばらばらに割れて

苦しい中で今を生きている

今を生きている

 

もうまさに登場人物たちの悩み苦みながら必死にもがいているシーンそのものなんですよねー。

部員たち全員が一致団結して、それぞれの声が音となって、さらに音楽となって会場内に響きわたるシーンは本当に良かったです!

これぞザ・青春って感じ。

 

ちなみに僕の話になってしまいますが前職は県立高校の教師をしていて(職場環境がブラックすぎて辞めた)

学校行事のなかには「合唱コンクール」 なんてものがあるわけですが教師目線でいって

 

合唱コンクールというイベントは大嫌いでした

 

なぜかというと、男子生徒は全然歌わない。これが苦痛でした。

まじで歌いません。

ボールとほうきがあればそのへんで勝手に野球をはじめたり、ふざけあってガラスとか平気で割ったりしてました。

軽い殺意が何度も湧きました。(笑)

 

僕が学生だったとき、歌はそんなに好きじゃなかったけど「みんなで歌おうよ!」っていう雰囲気になったら一応それなりに協調性をみせて歌ったけどなー。そう思っているのは僕だけで、当時、僕の担任をしていた先生たちも

ぶっ○○してぇ

なんて思っていたのかな。

だとしたら、ごめんなさい・・・もう遅いけど。

 

そんなこともあってガッキーがラストのシーンで生徒たちに向かって

「あんたたちのことは正直に言って、最初は嫌いだった」

というシーンがあるのですが、僕はそのとき

 

めっちゃ分かるわぁ

 

と一人で共感してしまった。(笑)

 

小話

ガッキーは今作では元プロピアニストという設定なわけですが、彼女自身、ピアノの演奏なんてしたことがなかったそうです。

 

そのため、撮影に入るまでの六ヶ月の期間を使ってピアノの猛特訓をしたんだとか。その成果があってか分からないですけど、作中でガッキーがピアノを弾くシーンはかなり様になっていてかっこ良かったです!

 

役者っていいよなー。映画の役作りのためにいろんなことに挑戦できて。

 

ブログ作成時間:30分