エンジニアが映画評論家になるブログ

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エンジニアをしている普通のサラリーマンが、映画評論家になってどや顔で映画評論するまでの軌跡を綴るブログです

頭の中だけに存在する携帯電話があったら、あなたは誰と話しますか? 映画感想「きみにしかきこえない」

365日映画カレンダー 10月2日 「きみにしか聞こえない

 

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昔の映画だからか、あまりいい画像がなかった・・・それにしても成海璃子の透明感はすばらしい!

youtu.be

↑この予告動画みてもらえば分かると思いますが、主人公の演技は正直あまりうまくないと思う・・・

 

おすすめ度

世界観とストーリーはすごくいいです!

【おすすめ度は1が低評価。5が高評価。あくまでも独断と偏見による評価です】

 

【ざっくり感想】

頭の中に「携帯電話」があったら?

 

直接声にしなくても頭の中で考えるだけで相手と通話ができるからテストでもカンニングし放題だし、両手があいた状態で電話できるのも便利そう(笑)

 

主人公ふたりはある日とつぜん頭の中に存在する携帯電話を手に入れるわけですが、その携帯電話にはある「ルール」があって、物語が進むにつれてすこしずつその謎が明かされてゆくので飽きずに観ることができました。

 

作中で流れる、ドリカムの「君にしか聞こえない」もいい曲で、歌詞もすごくいい。

ひとつ難点をあげるとすれば、主人公ふたりの演技がいまいちだった・・・という点が気になりましたが全体的な評価としてはすごく良かったですね。

概要

人とコミュニケーションをとることが苦手な女子高生のリョウは、クラスメイトが携帯電話の話題で盛り上がっているのを遠くから眺めることしかできなかった。

そんなある日、リョウはおもちゃの携帯電話をひろう。

その日以降、リョウの頭の中で携帯電話の着信音が鳴り響くようになり驚くリョウであったが、頭の中の携帯電話はシンヤという男性とつながっていたのだった。

感想

キャラクターの設定もいいし伏線の回収もうまい

原作は「乙一」という作家の「きみにしか聞こえない CALLING YOU」で、小説の初版発行が2001年ということだから、ちょうど携帯電話の所有率が爆発的に増えてきた時期だと思います。

 

この時期くらいから「携帯電話」を題材にした作品って多かったですよね。ホラーだと「着信アリ」とか。

映画ってその時代のトレンドだったり社会情勢が反映されていることが多いから、映画を通じてその当時の日本の様子がすこし見えてきて面白いです。

 

さて、今作は頭の中にだけある実体のない携帯電話にまつわる物語になるわけですが、主人公ふたりの設定がすごく良かったですね!(ちなみに僕は原作も読んでいますが、原作よりも映画の設定の方が良かった)

 

まず一人目の主人公である「相原リョウ」(成海璃子)は幼いころにおきたある出来事が原因で自分に自信がもてず、家族やクラスメイトたちともうまくコミュニケーションがとることができません。自分に対するコンプレックスが強く、例えば国語の授業中では大きな声で音読することができなかったりします。

 

一方、もう一人の主人公である「野崎シンヤ」(小出恵介)はリサイクルショップで働いているのですが、彼は幼いころより耳が聞こえず、またそれにより声も出せません。しかし頭の中の携帯電話では自分が考えたことが声となってリョウに伝わるし、また声もしっかりと聞きとることができるためシンヤにとってリョウとの電話はかけがえのない存在になっていきます。

 

シンヤは耳が聞こえないこと、しゃべれないことはリョウに黙っておきます。

実はこれがちょっとした伏線になっていて、それがすごくいい!

頭の中の携帯電話では考えただけでそれが声となって相手に伝わるので、まさかシンヤがしゃべれないなんてなかなか思いつかないですよね。

 

本作ではちょっとした設定が伏線になっている部分が他にもいろいろあって、物語が進むにつれて「そういうことだったのかー!」と驚かされます。

 

一番よかったシーン

映画の話から少しそれますが、みなさんは「進研ゼミ」の広告漫画を読んだことがありますか?

小学生くらいだったかな?

気がつくとポストの中に入っていて、結構おもしろかったのを覚えています。

 

ストーリーの展開はいつも大体同じで

 

・さえない主人公(勉強× 恋愛× 部活×)が・・・・

 

→主人公が進研ゼミを始めると・・・

 

勉強、恋愛、部活、すべてが嘘のようにうまくいって・・・

 

→「進研ゼミにはいってよかったー!」で終わり(笑)

 

勉強がうまくいくのは分かるけど、どうして恋愛&部活動までうまくいくんだよ・・という疑問は小学生の当時でも抱いていましたが、よく分からんけどいけいけハッピーな展開は僕的には結構好きです。

 

リョウとシンヤは頭の中の携帯電話をつかってコミュニケーションをとるようになるわけですが進研ゼミよろしく、二人の人生が一時的にいけいけハッピーになるのは映画をみていてほっこりしました。

 

本当にちょっとしたきっかけで人生は前向きに動き出すのかもしれませんね・・・進研ゼミの漫画はそういうことを言いたかったのかもしれません(笑)

 

小話

mitoramu.hatenablog.jp

上の記事で紹介した「くちびるに歌を」原作者は「中田永一」という作家さんで、実は今回僕がみた「きみにしか聞こえない」の原作者「乙一」と同一人物なんですよね。

 

要するに別名義で小説を書いているということです。

 

僕は学生時代から「乙一」さんのファンで、デビュー当初は残酷な物語を書いているイメージでしたが、かと思えば今作みたいにあたたかくて優しい物語も書けて、作品ごとに作風が全然ちがうのでファンの間では残酷な物語のときは「黒 乙一作品」、そうではないときは「白 乙一作品」なんて呼ばれています。

 

今作(小説版)なんかはまさに「白 乙一作品」なわけですが完全なハッピーエンドではなくて、「なにかを犠牲にするけど登場人物が精神的に成長する」という展開にもっていくのが乙一のにくいところです。

「残酷さ」と「感動」のバランスが絶妙で、「悲しいけど心温まる」という不思議な感覚につつまれるんですよねー。

 

原作を読んだことがないという人はこれを機会に原作を読んでみてはいかかでしょうか?

原作と映画では設定が違っていて、映画を観たあとに小説を読んでも十分に楽しめると思います。

 

というか、面白いから是非よんで!(笑)

  

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